日・米・EU側が勝訴、アルゼンチンに是正求める
日本の経済産業省は15日、世界貿易機構(WTO)が同日付で発表したアルゼンチンの輸入制限措置に関する紛争処理上級委員会の報告書について公表し、輸入制限措置の是正を求めていた日本、米国およびEU側の主張が全面的に認められたと明らかにした。
輸入制限措置の是正を要求 パネルは日本側を支持
アルゼンチンは2008年11月以降、各品目に対して輸出入均衡要求などからなる輸入制限措置を導入し、自動車をはじめ多様な品目について、日本からの輸出に支障が生じていた。
日本政府ではこの改善を目的として、2012年8月より米国と共にアルゼンチンに対する働きかけを開始。同年12月にはこれにEUも加わり、輸入制限措置に関する審理をWTOの紛争処理小委員会(パネル)で行うよう要請、措置の是正を求めた。
これを受けて設置されたパネルは2回の会合を経て、日・米・EU側の主張を全面的に認めるとしたパネル報告書を2014年8月に公表。アルゼンチンの輸入制限措置は、数量制限の一般的廃止を定めたGATT第11条第1項に整合していないとの見解を示していた。
アルゼンチン上訴も、WTOは再度日本側を支持
今回公表された上級委員会報告書は、アルゼンチン側がこのパネル報告書を不服とし、2014年9月に上訴したことを受け作成・公表されたもの。
上級委員会報告書は第1審にあたるパネルの報告書を支持し、輸入制限措置がいくつかの面でGATT第11条第1項に整合しないと指摘。報告書では合わせて、WTO協定に従って措置を是正するようアルゼンチンに勧告しており、WTOとして再度日・米・EU側の立場を支持する形となった。
報告書は日本の輸出を担保 控訴無ければ確定へ
宮沢経済産業大臣は報告書の公表に際して談話を発表し、アルゼンチンの輸入制限措置が貿易を大きく阻害する保護主義的なものであったと指摘。同国が報告書の判断を受け入れ、早急かつ誠実な是正を行うことを求めるとした。
大臣は合わせて、同様の保護主義的措置が新興国間で広がりを見せていることについても述べ、今回の判断はそれらがWTO協定上容認されないことを示すものであると説明。日本企業による円滑な輸出が担保されたとして、報告書の意義を強調した。
今回発表された上級委員会報告書は、1月26日に開催される定例WTO紛争解決機関会合で正式に採択される見通しだ。今後60日以内にアルゼンチン側による上訴が無い場合、パネル報告書の内容でWTOとしての判断が確定することとなる。

経済産業省 ニュースリリース
http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150115004/